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icon of Amane Katagiri おいしいイルカカレーを作るコツ♡

おいしいイルカカレーを作るコツは、たったこれだけ!

  • できるだけ新鮮なお肉を仕入れましょう。冷凍品や干物では臭みが取れないことも……
  • お肉はきちんと洗ってからアク抜きと塩ゆでしましょう。下処理をサボらないのがポイント
  • イルカ肉と相性がいい? 意外なあのスパイスをたっぷり入れて一流レストランの味に!

初めてイルカ肉を調理する人にありがちなのが、下処理の大切さを軽視した失敗です。知らないお肉を全て「鶏肉みたいな味」だと思う人もいますが、ミオグロビンは肉の色を決めると同時に――


「先輩、野菜切り終わりましたけ、ど……うわ、くさっ! 料理の匂いじゃないですよ、これ!」

「だ、だからカレーにするんだよ。大丈夫だって。ちゃんと炒めればほら……うえっ」

その「大丈夫」な料理を作っていてえずくわけがない。私は野菜でいっぱいのボウルを抱えて、異臭を上げるコンロにもう一歩近づいた。メイさんは、逆手で握った木べらでやたらと鍋をかき回しては、強がる言葉とは裏腹に不安そうな視線で鍋底をきょろきょろ覗き込んでいる。まるで具材に足が生えて歩き回っているのを目で追っているみたいだ。

メイさんは弱気な表情を誤魔化すように「はははっ、ミオは心配性だなぁ。ちゃんとスーパーで売ってた肉だから大丈夫だって」と涙目で笑ってみせた。スーパーで売っていたから大丈夫なんて、自分に言い聞かせるだけの強がりみたいで逆に不安になる。

「これ、結局なんの肉なんですか?」

「いや、だからその……食用の肉だよ。ちゃんと売ってたんだから」

「もう院生になったんですから、スーパーで『食用肉』なんて買わないでください! ペット用とかでしょ、それ」

「い、いや確かに見切り品だったけどさ……でも……

水垢でくすんだステンレス鍋には虹色の皮膜がまだらに広がっていて、これまでほとんど棚に仕舞われたままだったのを物語っている。木べらだってやたら綺麗な上に輪郭もシャープなままで、ひょっとしたら今日初めて使うものなのかもしれない。

私の問いをかわす先輩の沈黙をかき消すように、ジュー……と鍋から肉の焼ける音が溢れ出る。音だけは美味しそうな鍋底をおそるおそる覗き込むと、白い脂肪を厚く備えた赤黒い角切り肉が油の上で滑っているのが一瞬だけ目に入った。見たことはないはずなのにノスタルジーを感じるような、不思議な色合いだ。

シュワシュワと上がる湯気には、牛・豚・鶏……前に食べた熊肉の時雨煮とも違う、およそ食べ物らしくない獣臭さ、単なる見切り品の魚とも違う妙な生臭さ、鼻が痺れるケミカルな匂いが渦を巻いている。加熱された薄黄色のサラダ油に肉の臭みが溶け込んで、キッチンの隅から隅まで赤茶けた香りで覆われつつあった。

「おかしいと思ったんですよ。先輩が料理を作ってくれるなんて」

メイさんが得意なのは、料理より大学周辺にある飲食店の情報収集で、SNSでよくバズる簡単レシピの一つさえ作ったことがない。安いストロングチューハイの違いは区別できても、牛肉と豚肉のパックを見分けるのさえ怪しい。煙草の味は分かっても、ローリエとローズマリーの使い分けは知らない。

私のお弁当に変なアドバイスしてくるところが嫌いとか、自炊できないのが悪いとか言いたいわけじゃない。そういう人ってだけだ。

「つまり、ミオだって私の味覚と嗅覚は信じてるんだろう? じゃあ、あとはちょっと料理に慣れれば……

「あーはいはい、そうですね。こんな肉が美味しくなると思って炒めてるんですから、先輩はよほど天才的な嗅覚を持ってますよ」

「そんなに怒るなよ。料理を手伝ってくれるって言ったのはミオじゃないか」

「何の肉かも分からない料理を食べたいなんて、一度も言ってませんよ」

メイさんはそわそわと木べらを滑らせて落ち着かない様子なのに、その口調だけはまるで完成間近の料理を仕上げるみたいに落ち着かせている。なんだってそんなに強がるのだろう。もちろん、私の眼下では正体不明の食用肉が痺れる匂いを上げて踊っているだけで、そこには料理らしさの欠片もない。

まさか、このままここにカレールーを放り込んで完成だと言い張るんじゃなかろうか。

「まぁ、その話は食べるときにするからさ。まずは、この肉をどうしたらいいか一緒に考えよう」

「何の肉かも分かんないのに、どう料理するかを考えなきゃいけないんですか?」

「ミオだって、この前いきなり部室でホラー映画を流し始めたじゃないか。そういうの苦手だって知ってるくせに」

「いきなりホラー映画流したって死にませんって」「死ぬよ、最悪ね」「死にませんって!」「死ぬってば」「ソースは?」「イットを見て心臓発作で死んだっていうニュースがアメリカで――」「それフェイクですよ」

いきなり流したホラー映画というのは、たぶん部室に転がっていたレンタル落ちの中古DVDのことだ。涙目で強がるメイさんを宥めるのに苦労したのを思い出す。今どき「ノロイ」なんて、怖さより先に懐かしさが来るタイプの名作だと思うけど。それにしたって、大学生にもなってあんなに怖がる人は初めて見た。

メイさんはオカルトがすこぶる苦手だ。理屈では大したことない作り話だと分かっていても、本能が「説明できない何か」を感じ取って全力で拒否するらしい。こういう映画を作っている側からすれば嬉しいだろうけど、帰宅して部屋のクリアリングが終わるまで付き添ったこっちの身にもなってほしいところだ。

「あぁ、知ってるさ。私が言いたいのは、ホラー映画のせいで死ぬってのは随分なリアリティがあるってことだ」

なんだか、今日のメイさんと似ている気がする。

「お肉の話じゃないんですか?」

「分かってるじゃないか。つまり、この肉を食べたら最悪死ぬ……いや、違う違う。間違えた」

勢いのままに私を言い負かそうとしたメイさんは、木べらを動かす手を止めて「だからこの肉は、えーと……」と呟いたきり黙り込む。それから、うーん、と唸ってコンロの火を消した。


メイさんと向かい合ってダイニングテーブルに座る。四人で座るには少し狭くて、二人で使うには少し大きい中途半端な広さの机。ここに古いブラウン管のテレビと古いプレーヤーでもあれば、いつもの部室とあまり変わらない設備になる。

しばらく換気したおかげで、キッチンを覆うあの異臭はもうすっかり薄れている。それでも、メイさんはまだ落ち着かない様子だった。鴨肉やマニア向けのジビエなんかよりずっと赤黒い肉の話をすると、曖昧な返事でごまかすだけだ。やっぱり、ホラー映画に慄くメイさんと少し似ていた。

とはいえ、肉を食べたり映画を見たりして死ぬか死なないかなんて、コンロに火が着いたまま言い争うようなことではなかった、と思う。でも、落ち着こうにも深呼吸一つできない匂いだったのだから仕方ない。

「とりあえず、ちゃんと話してください。全部教えてくれないなら、私本当に帰りますよ」

「えーと、まず……油の量が多かった、かな」

「それだけ? じゃあ、油が腐ってたってことですか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど……

「先輩、さっきからおかしいですよ。言ってくれないなら私は食べませんからね。こんなの絶対お腹壊すもん」

いくら料理をしないからって、ただのサラダ油がこんな異臭を上げるほど劣化することはないだろう。古い油の酸っぱくてもたれる匂いというよりも、肉の脂に奥まで染み付いた濃い獣臭さが油に溶け出して蒸発した匂いだった。まさに彼女が隠しているその肉の匂いだ。

メイさんはどうして、この肉の正体を教えてくれないのだろう。まさか、私に毒を盛ろうというわけではあるまい。自分も食べるカレーなのだから、これではただの間抜けな無理心中だ。

じゃあこれが、私の――先輩と一緒に死んでもいいという――気持ちを試すためのサインだとしたら? かつては、心中相手を探して文通する人たちの間で死に誘うための符牒が使われていたらしい。でも、お互いの実家にあいさつに行くどころか、付き合ってもいないのに?

もし、メイさんがどうしてもなんて言い出したら……いや、それは流石に考えすぎだ、と首を振る。どちらにしても、何も知らずに食べる理由はない。

はぁと溜息をつく。すっくと席を立つ。なぜか謎の肉のまま食べさせようと意地を張るメイさんも、流石に私が帰ってしまうと困るようで、テーブルに手を突いて慌てた様子で立ち上がった。イスがガタリと大きな音を立てて床を滑る。

「あー、待て待て。分かった。分かったよ。これ……実は、人魚の肉なんだ」

「人魚の肉? 何ですか、それ」

心中の誘いでも飛び出すのかと身構えていたところに、ダークメルヘンな世界からおかしな単語が飛び出して思わず聞き返してしまう。人魚の肉なんて、それがスーパーで売っていて、しかも見切り品になるまで売れ残っていたなんて信じられるわけがない。まるでホラー映画の導入みたいだ。そう、メイさんがとっても大嫌いな。

「私だって完全に信じてるわけじゃないさ。でも、袋にそう書いてあったんだ」

「変な嘘つかないでくださいよ。そんなに隠したいんですか」

「嘘じゃないって……ほら、袋にも書いてある」

そう言って、メイさんがゴミ袋から半透明のビニール袋を取り出す。冷凍食品用の厚手の二層フィルム袋の表面にはラベルが貼られていて、確かに「人魚肉」と大きく印刷されていた。小さな文字で管理温度や業者の名前も書かれていたようだが、既にかすれていて見えない。

霜が溶けてしっとりと湿った袋からは、鍋に立ちこめたツンとした獣臭にレバーっぽい血生臭さを足したような……これまた異臭としか表現できない匂いがした。

「人魚の肉だっていうなら、最初から教えてくださいよ。まぁ……そう言われても、意味は分かりませんけど」

「食べたくないって言われたら困るから……その、後で教えればいいと思ったんだ」

「そんなに食べたいなら、一人で食べればいいのに」

「ほ、ほら……人魚の肉を食べると不老不死になるって言うだろう? そう考えると、一人で食べるのが怖く、なっちゃって……

メイさんが絞り出すような声でそう告げる。つまり、彼女が白状しているのはこういうことだ――面白半分で買った「人魚の肉」なんてジョークみたいな食材が、いざ調理しようとするとオカルトが渦巻く塊に見えてきて、食べるも捨てるも一人ではできなくなった、と。

その恐怖を和らげるために、一緒に食べてくれる――しかも、呼び出せばノコノコ来て疑わずにカレーを食べるような――誰かを探していたということだろう。

そもそも不老不死になんてなるわけがないけれど、もし仮に超自然的な呪いが本当に降りかかっても、自分一人じゃないから怖くない……なんて理屈で、恐怖を抑え込もうとしたのだ。こんな怪しい肉……一緒に食べてくれる相手を探すより、一緒に捨ててくれる相手を探す方が早いと思うけど。

何より腹が立つのは、メイさんが私を一緒に食べる相手として選んだってことだ。しかも、呼んだ目的まで隠して食べさせる相手として。素直に野菜まで切っていたのがバカみたいだ。

「じゃあ、先輩は……私を騙して不老不死になる意味不明な肉を食べさせる気だったんですか? ひどいですよ!」

「何もここで死ぬってわけじゃない。ちょっと寿命が延びるだけだし。不老不死になっても困ることはないさ」

「それを決めるのは私です! 勝手なサービスで寿命を延ばされたら、たまったもんじゃありません」

私だって、こんな非科学的な迷信に本気で怒りたいわけじゃない。でも、鍋に転がっているのが何の肉だとしても、メイさんが私を騙して食べさせようとした事実は変わらないのだ。百歩譲って不老不死になるのを受け入れたとしても、そんな大事なことを隠すような人と一緒に不老不死になるのは、絶対に嫌だと思う。

「おいおい、本当に不老不死になるってわけじゃないのに。黙ってたのは悪かったけど、そんなに怒るなって」

「不老不死になるって言ったのは先輩じゃないですか。死ぬかわりに不老不死になるってだけで、こんなの無理心中と一緒ですよ!」

「で、でも……もし本当に不老不死になったら、頼りになるのはミオだって思ったんだ。これはほんとに。嘘じゃない」

「それ、フォローのつもりですか? 本当に、もう……最悪です」

私はそう呟いて下を向く。こんな謎の肉を食べたって、どうやっても不老不死になんかなるわけがない。それでも、メイさんが妙なオカルトの恐怖から逃れるために私に手を伸ばしたというなら、私たちが本当に不老不死になってもおかしくないと思う。彼女がその恐怖を信じている限りは。

そう意識すると、メイさんが私と心中したいのだと一瞬でも疑っていたのが恥ずかしくなる。それを気取られないように、私はメイさんを睨み付けて、またわざと大きな溜息をついた。


調理を再開した私たち(ほぼ私だけど)は、まず「人魚の肉」の下処理をやり直すことにした。表面に火が通ってくさい肉汁が閉じ込められそうになっている肉をまずは半分にカット。水洗いすると繊維の隙間から赤い血液が流れ出す。それを水を替えて何度か。一度茹でこぼしてアクを抜いた後、ほんのりした生臭さが残るので、最後に三パーセントの塩で茹でたら下処理は終わり。

人魚の肉の「うま味」なんて油に溶かしたら、カレー全体にあの獣臭さが広がって取り戻せなくなる。野菜は素直に別の鍋で炒めて、水を注いで、それから肉を入れて煮始めるのが吉。市販のカレールーでは力不足と悟って、ショウガをたっぷりと、味噌を少し入れたのが一番よさそうだった。ここでタイマーストップ。

「あんな状態の肉でも、なんとか食えるもんだなぁ。ちょっと血の匂いは残ってるけど」

「私がちゃんと臭み抜きをやり直したからですよ。そもそも、血抜きもしないで焼き始めたのは先輩じゃないですか」

「いやー、ごめんごめん。早く焼かないとミオに怪しまれると思って」

「あんな匂い、怪しむなっていう方が無理ですよ」

何度も洗って茹でこぼした人魚の肉は、半分ほどの大きさに縮んだ上に、表面がぼそぼそとして美味しそうには見えない。それでも、おそるおそる口に入れると……いかにも謎の肉っぽい、弾力のあるジビエと魚の中間っぽい味が広がる。

舌の感覚に集中すると、引き出されるのはわずかに残った生臭さと血生臭さで、脂の獣臭さも抜け切っていない。それでも、カレーの味でごまかせるくらいには――

――なんか……慣れてくると食べられますね、これ」

「あ、あぁ……なんか、この独特の食感も癖になるっていうか……美味い、かも」

「寝かせたら脂の匂いが回っちゃいそうですし、鼻が慣れてるうちに食べちゃいましょうか?」

「そ、そうだな。盛り付けが面倒だし、鍋ごと持ってくるよ」

カレールーを一箱の半分だけ使う、三~四人前のごく普通のレシピだ。つまり、二人でもう一杯ずつ分ければ食べきれる量になる。おそらく、その計算に間違いはなさそうだ。

しかし、私はそこで妙な感覚を覚えた。たぶん、メイさんも同じだ。キッチンに戻るメイさんに合わせて「あ、私が盛り付けますよ」と立ち上がったら、びくりと驚いて振り向いたから。まるで、私が何か企んでいるのを疑っているように。そして、彼女自身が何かを企んでいるように。

こんなの二杯なんかじゃ足りない。美味すぎる。なんなら鍋ごと食べたい。カレーの匂いが鼻をくすぐって、まだ一口も食べていないような食欲が湧き上がってくる。

「こんなに美味しいカレーで不老不死になれるなら、一石二鳥だなぁ」

「気楽でいいですね。私は別に、先輩と一緒なら不老不死になってもいいですけど……

「へぇ。それ、告白のつもりかい?」

そんなつもりはなかったけど、口の中でもう一度言ってみると、確かに吸血鬼に告白してるみたい。

もちろん、メイさんは同じサークルに所属しているだけのただ仲のいい先輩で、付き合いたいだなんて一度も思ったことがなかった。どんな恋人がいたのか、どういうキスをするのか、ついでに彼女の実家がどんな玄関をしているのかも知らない。

それでも、心中するよりよっぽどましだ、と思ってしまう。不老不死になったって、困るのは何十年も先のことだ。それに、メイさんと死ぬまで一緒ってわけでもないのだ。

……でも、嘘をつく人とは暮らせないんで。やっぱ無理かも」

「それ、百年経っても言ってたらきっと最高のギャグになるだろうね」

メイさんがクスクスと笑いながら、温くなったカレーの鍋に火を着けた。ふつふつと小さな泡を上げながら、カレーの香りと一緒に美味しそうな獣臭さが鍋からどっと漏れ出してくる。どうしてこんな匂いを必死に取り除こうとしていたんだろうと、少しうっとりした。

テーブルに置くなら鍋敷きがいるはずだ。いくらメイさんが自炊をしないからって、トリベットでなくても鍋敷きの代わりになるタオルくらいはあるだろう。キッチンを探そうと思って辺りを見回すと、カレーをそっとかき混ぜるメイさんの足元に違和感を覚えた。

「先輩、足に何か付いてますよ……これ、鱗? 人魚に鱗なんてってありましたっけ?」

「あるだろ、下半身は魚だもの」「そうじゃなくて」「どういう意味?」「だから、お肉の袋に入ってたんですか?」「魚っぽい部位は入ってなかったな」「じゃあなんで」「加工のときに混ざったんだろう」「人魚の加工工場で、ですか?」

てっきり、東南アジアあたりではポピュラーな安い輸入肉あたりを「人魚の肉」だなんてジョークみたいに売り捌いていたのだと思っていたら、魚というのは本当だったらしい。こんなに大きな鱗だと、ちょうど人間の身長と同じくらい――ちょうど人魚と呼んでマーケティングしてもおかしくないような大きさ――かもしれない。

ここまで肉っぽい魚が出回っているなんて知らなかった。もっと回転寿司のネタとして話題になっていてもいいのに。

「ミオだって、指の先に何か……おや、それも鱗じゃないか?」

「あれ……ほんとだ。気付きませんでした。じゃあ、袋に入ってたんですね。きっと」

いつの間にか爪先に乗っていた鱗を拾い上げて、メイさんの顔を透かしてみる。薄く色づいた透明なプラスチックに、年輪に似た縞模様が何周も刻まれていて、向こうの風景が水中を覗いているように歪んで見えた。指先がひんやりして、水が流れ出してくるような感覚が心地いい。鱗の向こうのメイさんが海の底で料理をしているようで、なぜだか私たちは顔を見合わせて笑う。

気が付くと、外はもう夜になっていた。

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